毎年夏から秋にかけて日本を絶望のどん底へと突き落とすおそろしい自然災害、それが台風です。
毎年テレビのニュースで台風情報を見て誰もが恐々としているかとは思いますが、あの憎い台風とはいったい何者なのか?
いつから台風と呼ばれ、どこで産まれ、どこへ向かうのか?
案外、台風について知っている事は少ないのではないかと思います。
そこで今回はそんな台風について最低限知っておけばきっと台風情報の見方が変わるような、台風について知っておきたいことをご紹介します。
知ったところで……と思う方も、知っておけば色々とウンチク語れますから知っておいて絶対に損はしない内容ですのでご覧くださいませ。
台風誕生
台風の誕生は、まず熱帯や亜熱帯の海にて温められた水蒸気が空に上り、渦を巻くようにそれがまとまっていき、熱帯低気圧となります。
そしてその熱帯低気圧が更に力をつけていき、最大風速が17m/sを超えた時、台風と呼ばれるようになります。
つまりはあくまでも人間の勝手に決めた基準が存在し、熱帯低気圧の中でその基準を超えたものだけが「台風」と呼ばれる資格を得るわけです。
中身は同じでも、熱帯低気圧のいる場所によって呼び名が変わる
さて、ニュースなどで「アメリカにハリケーンが上陸」のような報道を目にしたことがあるかと思います。
仮にそのハリケーンが日本の近海に移動してきた場合には、呼び名もハリケーンから台風へと変わります。
つまり、中身は一緒でも場所によって呼び名が変わってしまうのです。
以下、海域と呼び方を書いてみます。
北西太平洋(日本を含むアジア圏)⇒台風(Typhoon)
北東太平洋・大西洋(アメリカなど)⇒ハリケーン(Hurricane)
インド洋・南太平洋(インドやオーストラリアなど)⇒サイクロン(Cyclone)
中身は完全に同じ熱帯低気圧ですが、ハリケーンは最大風速が33m/s以上でハリケーンと呼ぶようになるなど、認定ラインが台風とは異なることだけは注意が必要です。注意しておかないと困るような事も普通に生活している以上はありそうにないですが。
台風が産まれない国、来ない国もある
台風誕生の項目で書いたように、台風(ハリケーン・サイクロンも含む)というのは熱帯の海で誕生します。
そして、熱帯の海で渦を巻いて成長していくのですが、この渦を巻く原理の重要なものがコリオリの力。
もしかしたら学校で習って覚えている方もいるかも知れませんが、コリオリの力というのは地球の自転によって生じる力の事。
細かく書くと僕も保たないので省略しますが、とにかくコリオリの力によって北半球と南半球とでは渦を巻く向きが逆になります。
※しっかりコリオリの力を勉強したい方はwikiをどうぞ。コリオリの力wikipedia
日本に来る台風は、全て反時計回りに回転しています。
これは熱帯低気圧が産まれる過程で、中心に風が吹き荒れる際に、コリオリの力で若干風が右にズレる為です。
これにより渦は反時計回りに形成されていくことになり、台風の右側の方が左側よりも基本的には強いのもその為です。
逆に、このコリオリの力が働かない場所だと台風は産まれない(渦が巻けないから)とも言い換えられます。
コリオリの力が働かない場所としては、南半球と北半球の境界、赤道直下のラインが挙げられます。
そう、意外かも知れませんが、暑い赤道直下に存在する国ではほぼ(絶対に来ないとは言い切れないそうです)台風が発生しないのです。
また、北極や南極など、どう頑張っても台風が熱帯低気圧のまま到達できない場所もまた台風が来ない場所です。
例えばシンガポールでは全く台風が来ないことで有名です。
他にもロシアやモンゴルなどで海からかなり遠い場所には当然台風は到達できない為に来ません。
台風の強さ
次に、台風の強さについてご説明。
先に挙げたように、台風は風速17m/sを超えた熱帯低気圧を呼ぶ名前です。
そして強さには段階があります。
風速17m/s~32m/sまでは台風。
風速33m/s~43m/sまでは強い台風。
風速44m/s~53m/sまでは非常に強い台風。
風速54m/s以上は全て猛烈な台風。
ニュースなどで台風情報を見る際にこれを覚えておくと、どのぐらいに風速を伴う台風かを知る目安になります。
因みに猛烈な台風はどのような被害を与えるかというと、屋根も飛ぶし車も浮くしトラックも余裕で横転します。
2019年の10月に日本に上陸した台風20号も猛烈な台風。
そして参考までに2018年9月に日本に上陸した台風21号の映像を貼るので見てみてください。その恐ろしさがわかります。
因みに、アメリカを襲うハリケーンのニュースで「カテゴリー3」などの言葉を聞いたことがあるかと思います。
ハリケーンの基準では、1分間の最大風速を元にカテゴリー分けがなされます。
風速33~42m/sがカテゴリー1。
風速43~49m/sがカテゴリー2。
風速50~58m/sがカテゴリー3。
風速59~69m/sがカテゴリー4。
風速70m/s以上がカテゴリー5。
アメリカへのハリケーンのニュースを見る際には、カテゴリー5であったら「かなりヤバイのが来てる」と思って差し支えないでしょう。
余談ですが、日本での最大瞬間風速の観測史上1位の記録は、昭和41年に発生した台風18号が宮古島にて打ち出した最大瞬間風速85.3m/sというもの。
↑貼り付けました動画にて風速80メートルを再現していますが、あくまでも機械によるピンポイントな風です。
実際の台風はこのレベルの風が様々な方向から雨と共に吹き付けるので、威力は数倍にもなることでしょう。
おうちでじっとしていましょう。
台風の大きさ
台風の大きさもまた、サイズによって決まった呼び方があります。
日本の台風の場合だと、風速15m/s以上の強風域の半径の大きさでその呼び方が変わります。
強風域の半径が500km未満は、台風。
強風域の半径が500~799kmで、大型の台風。
強風域の半径が800km以上で、超大型の台風。
超大型の台風になると、薄い雲部分も合わせればスッポリと日本列島が入ってしまうほどの大きさにもなります。
因みに観測史上最も強風域が大きかった台風が、1997年8月に発生した台風13号です。
強風域の大きさはなんと2360km。
日本がスッポリなんてレベルじゃない大きさの台風です。
比較対象として、甚大な被害をもたらした2019年の台風19号(令和元年東日本台風)が最大時に強風域700kmほどにまで成長したのですが、なんとその3倍以上の大きさ。
その超巨大台風は日本を直撃はしなかったものの、中国で大きな被害を出し、さらに日本でも暴風雨による甚大な被害を受けたのです。
台風の名前は?
日本では一般的に「台風○○号」と呼んでいるので、台風の名前は気にしない方も多いかとは思いますが、実はしっかりと名前が決められています。
例えば、今この記事を書いている2020年8月3日現在、台風4号が日本では発生しているのですが、その名前は「ハグピート」です。
台風の名前は、2000年よりアジア名を用いるようになりました。
台風委員会という組織があり、そこに加盟している14ヵ国がそれぞれ10個ずつ名前を出し合って、合計140の名前が決められ、それが発生した順につけられていくシステムです。
※名前リストは気象庁のページでも見れるので興味があればご覧ください。
年毎にリセットされないので、140の名前が最後まで使用されたらまた頭に戻ることになります。
先に挙げた2020年台風4号のハグピートは、フィリピンの命名で66番目の名前です。
次に発生する台風は、韓国命名のチャンミーになります。
もちろん日本も名前を出しており、14個ごとに順番が回ってきます。
因みに次の日本名は、75番目の「クジラ」になります。
今年の台風13号が発生したのであれば、名前にも注目してみてください。
僕の調べ方が間違っていなければ、それはきっと「クジラ」という名前の台風になるはずです。
台風が消える時
そろそろ台風ともお別れ。
台風誕生と成長が熱帯の海による水蒸気パワーであったことからなんとなく察することは出来ると思うのですが、台風は水蒸気パワーを得られない場所では徐々に勢力を落としていきます。
台風が台風ではなくなる瞬間というのは2通りあります。
1・熱帯低気圧ではなく温帯低気圧になった時。
2・台風と呼ぶための条件である最大風速が17s/m以下になった時。
2の条件はわかりやすいかと思います。
陸地に上陸したことでエネルギーを得られなくなり、次第に弱くなって風速も衰えて台風とは呼べなくなる状態ですね。
ニュースなどでは「台風は○○時に熱帯低気圧へと変わりました」などと言われるのがこの状態。
そもそもが熱帯低気圧ではあるのですが、強い風速を得ることで「台風」と呼ばれるようになっていたオレサマ台風権が風速も力も弱まったことではく奪され、元のただの「熱帯低気圧」となってしまうわけです。
ちょっとだけ切ない瞬間ですね。
そして1の温帯低気圧に変わる、というのはちょっとややこしい現象。
台風情報ではよく聞く言葉だとはおもうのですが、これは熱帯低気圧である台風が冷たい寒気を吸い込み纏うことで、もはや熱いだけでの熱帯低気圧ではなくなり、熱も寒も持つ(前線を伴う)温帯低気圧となった、と言う意味。
難しいですよね。そんなにしっかりわからなくて問題ないと思います。どうしても理解したい方は、前線(wikipedia)から学ぶとわかりやすいかも知れません。
とにかく、ニュースでの温帯低気圧に変わった宣言は台風にとってはサヨナラ宣告です。
熱帯の海からはるばるやってきて、偏西風に乗って日本までようやく到達できておもてなしされるかと思いきや、大勢の人間に睨まれつつ上空を通過していく台風。
大きな一つ目で見据える地上には何が見えているのやら。
温帯低気圧に変わった、と報道されたその瞬間、台風はきっと己の産まれた意味を問いながら空中へと雲散霧消していくのです。
さようなら台風。
ありが……(とう、とは言えないンだ許してよね)くそったれ台風。
まとめ
台風への知識、少しでも深まったでしょうか?
忌々しい台風ですが、最低限今回ご紹介したことを覚えておけばきっと違った視点で見れるはず。
何気なく見ているニュースの台風情報からも、きっと多くの情報を読み取れるようになっているはずです。
とにもかくにも、今年も台風被害が少なく済むよう願うばかりです。
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