【ハゲ頭のパラドックス】結論、全ての人はハゲである【思考実験】

数字などで決められないもの、または定義する事が難しいものは世の中に無数に溢れています。

例えば、頭の毛が薄くなってきた時に悪口でも使われる「ハゲ」という言葉。

このハゲもまた定義が曖昧で、一体どうなっていればハゲなのか?ということが明確に決められているわけではありません。

古代ギリシャにおいて哲学が隆盛を極めていた頃、エウブリデスという一人の哲学者が発明したいくつかのパラドックスの中に、ハゲ頭のパラドックスというものがあります。

今回は、そんな「ハゲ頭のパラドックス」について少し考えを巡らせてみませんか?

エウブリデスはアリストテレスと同時代を生き、政治家や歴史家にも論理学を教えるほどの高名な哲学者です。

全ての人はハゲである

想像してみて下さい。

頭に髪の毛が一本もないハゲの人がいます。

そのハゲの人に髪の毛を一本植毛しても、やはりハゲです。

同じように、ハゲの人に髪の毛を繰り返し一本ずつ植毛しても、上記の理由からいつまでもハゲの人はハゲです。

同時に、全ての人もまたハゲであることがわかります。

いかがでしょう?

なんでやねん!

と思う方もいるでしょうが、文章の理屈だけを読めば確かにその通りなのです。

以前紹介したアキレスと亀の屁理屈感に似たものを感じますが、確かに文章だけを鵜呑みにすればハゲに一本ずつ毛を足していってもずっとハゲのままになりそうに思えます。

冒頭で書いたように、このパラドックスが投げ掛けてくる問いというのが、定義の定まっていないもの、境界の曖昧なものをどう扱うべきなのか? ということです。

このエウブリデスは面白いパラドックスをいくつも発明していますから、他にも少し考えてみましょう。

嘘つきのパラドックス

エウブリデスのパラドックスの中でもかなり有名なのが、「嘘つきのパラドックス」です。

このパラドックスは非常に単純で、

ある男が「俺が話すことは全て嘘だ!」と言いました。さて、その男の話すことは本当に嘘なのでしょうか?

というような内容です。

「俺が話すことは全て嘘」と言っているのですから、嘘なのでしょう。

でも「全て嘘だ!」と言っている言葉も嘘だとしたら、全て本当の事を話している、とも考えられます。

このパラドックスでは、その男が「嘘をついている」でも「真実を話している」のでも成り立ってしまうという矛盾が起きるのです。

頭がちょっとおかしくなりそうです。

角のパラドックス

次に、至高の屁理屈のようなエウブリデスのパラドックスをご紹介します。

それが、「角のパラドックス」です。

失くしていないものは、持っているはずである。

あなたは角をなくしたことがない。

つまり、あなたは角を持っているということです。

これはもう普通に読めばとんでもない屁理屈なのですが、論理学的には誤謬(ごびゅう)であり、意図したものであることから詭弁であると言えそうです。

この時代の哲学者たちは己の知力を振り絞って様々な議論を交わし、相手の意見や哲学を論破し合って向上していったのです。

哲学などに慣れていない者からしたら全然理解できませんが、哲学が力を持ち戦い合っていた時代というのはなんだかちょっと面白そうでもあります。

仮面の男のパラドックス

最後にもう1つエウブリデスのパラドックスをご紹介します。

これは以前紹介したテセウスの船と同じように同一性を扱ったパラドックスです。

「君はこの仮面をつけた男を誰だか知っているかい?」

「いいえ、知りません」

「そうかい。この仮面の男は君の父親だよ。では、君は自分の父親を知っているかい?」

これが仮面の男のパラドックスです。

仮面をつけた男=自分の父親

なのですが、仮面をつけていた為にわからなかったのか、「知りません」と答えた「君」。

それはつまり自分の父親を知らない、と言ったのと同じじゃね? ということです。

「知っている」ということがどういうことなのか?

そしてテセウスの船で「本物とは何か?」を考えたのと同じように、仮面をつけていた男を知らないということは自分の父親のことを知らないとイコールになるのではないか? などの哲学的小難しい問題が含まれているのです。

まとめ:全ての人はハゲである

哲学者のパラドックスは本当に頭がおかしくなりそうです。

パラドックスは矛盾ですから、考えれば考えるほど深みにはまっていってしまいます。

なるほど、だから古代ギリシャの学者達は皆ハゲているのですね。

考えすぎてお禿げになられたのでしょう。

つまり、「全ての人はハゲである」とエウブリデスが言った時、実はパラドックスでもなんでもなくて、マジに全員ハゲだったんじゃないでしょうか?

今ふと閃いたのですが……

僕らは産まれた時にはハゲです(例外ありますが置いといて)。

で、ハゲだった僕も、大人になって髪の毛が生えた僕も、同じ僕です。

よって、僕はハゲです。

と、言えますよね。

なんだか「角のパラドックス」と同じ誤謬ですが。

よっし、ちょっと古代ギリシャ行って戦ってくる!

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