鳥の中でも一際異彩を放ち、カッコよさもズバ抜けているのが猛禽類のタカやワシ。
そして都市部ではそもそも猛禽類を見かけることは滅多にありませんが、観光先などでは時折トンビに大事に食べようと思って買った食べ物を取られたりします。
実はこのワシとタカとトンビは同じタカ目タカ科に属しており、明確な区別がないことをご存知でしょうか?
以前イルカとクジラとシャチもまた明確な区別が無く、大きさなどでざっくりと名付けられている事を書きました。
このタカ目タカ科に属するワシ、タカ、トンビも、同じなのです。
というわけで今回は最低限知っておきたいワシ・タカ・トンビの違いと見分け方についてです。
ワシ・タカ・トンビの違いは?
大きさが違う
ワシとタカとトンビの違いは?と聞かれれば、まずは大きさが挙げられます。
分類上、ワシ>タカ≒トンビの順で大きいです。
ワシが1番大きく、タカとトンビが同じぐらいのサイズです(種類によって異なりますが、平均的に)。
参考までにワシの一種であるオオワシが羽を目一杯広げると、大きいものでは250センチにもなります。
日本で古くからベーシックなタカとして親しまれてきたオオタカの場合、羽を広げると大きいものでは130センチ。
また、トンビは大きなものでは羽を広げると150センチほどと言うのでタカよりも大きくなります。
タカ科の中での名前の分け方もこの大きさの違いが大体の基準になっており(大体というのがミソで、タカの中でもワシより大きい種類もあるため絶対ではない)、基本的にはタカ科で大きい種類はワシ、小さい種類はタカとなっています。
トンビはちょっと別枠ですが、これまたやはり明確にタカとワシと違いがあるわけではないので、ちょっと暴論かも知れませんが「トビタカ」みたいな名前を付けられていてもなんらおかしくはないのです。
鳴き声が違う
僕が色々と動画などで聴き比べてきました。
しかし申し訳ないのですが、タカとワシに関しては同じようにしか聴こえませんでした。
ところがトンビは違います。
そう、トンビと言えばピーヒョロローですね。
トンビの声だけは、ハッキリと聞き分けられそうです。
参考までにタカとワシも聴き比べてみて下さい。
まずはタカの鳴き声。
トンビとは明確に違いますね。
次にワシの鳴き声。
タカとワシとでは違う気はしますが、どう違うか? というのを明確に聞き分けるのは恐らく素人では無理なんじゃないかと思うのですがいかがでしょう?
鷲・鷹・鳶!漢字の語源が違う
ワシは鷲、タカは鷹、トンビは鳶。
同じタカ科で区別も明確ではないのに、ご存知のように漢字にすると三者三様。
ここにヒントがあるのでは?
ということで漢字漢和語源辞典というサイトにて調べさせて頂きました。
鷲(ワシ)
鷲という漢字は「京」と「犬」と「鳥」で出来ています。
「京」は家を表し、「犬」はその家の番犬みたいなものを表します。この「京」と「犬」とで比較的裕福な家を表しているようで、そこに連れ従う鳥、それが鷲なのだそうです。
漢字だけ見ても、ワシはやはり権力者や富豪の象徴的な鳥であったことがわかります。
鷹(たか)
次は鷹。
まず庇のようになっている部分は並んで飛ぶ姿を、そしてその中に人を表すニンベンと、比較的小型の鳥を表す隹の字が。
この鷹の字は、まさに人が小型の鳥を操って狩りをする姿なのだとか。
つまり鷹狩りです。
古来、鷹狩りは鳥狩り(とがり)と呼ばれていたようなので、鳥狩りに使う鳥をまとめて「鷹」というと鳥狩りそのものを指す漢字を作ったのかも知れません。
鷹狩りは日本だと古墳時代のハニワにもタカを手に乗せたものが発見されているので、江戸だ平安だとかいうレベルじゃない古い時代から行われていた可能性が高いのだそうで。
ただし、鷹狩りにはワシ類も使用されたので鷹狩りという名前だからタカのみを使用したわけではないことには注意です。
鳶(トンビ)
お次は鳶です。
鳶職という名前にも使われていますね。
この鳶という漢字は、鳥の上に乗っかっている漢字はいぐるみという矢に糸を付けて魚や鳥などを獲る狩猟道具を表しています。
それと鳥の漢字を合わせて、矢のように急降下
して獲物を獲る鳥、鳶となったのだそうです。
因みに鳶はトビともトンビとも呼ぶかと思いますが、どちらも使われるものなので間違いではありません。
ワシ・タカ・トンビの見分け方
さて、ここまでご紹介してきた情報を元にワシ・タカ・トンビを見分けてみましょう。
——と、やりたい所ですが、ハッキリ言って無理でしょう。
例えば空を舞うタカ科らしき鳥がいたとしても、それが大きいのかどうか素人にわかる筈がありません。
トンビだけは、鳴き声を聴けばすぐにわかる可能性が高いですが、タカとワシに関しては正直難しいと思います。
しかしながら、明確に見た目が違う種類もいます。
見分けることが困難であれば、フル暗記!
ということで日本で見ることが出来るタカ科の代表的な鳥をいくつかご紹介します。
日本でも目撃されているタカ科の代表的な鳥
オオワシ
日本では最も大きなワシであるオオワシ。オスでもメスでも全長は1メートルほどもあり、翼を広げると2メートル以上の大きさに。
黄色いクチバシと、頭のクチバシ真上に白い毛が生えているのが特徴的です。
ハクトウワシ
ワシのイメージと言えば僕の中ではダントツでこのハクトウワシなんですが、皆さんはどうでしょう?
さらに言えば、アメリカのゴツゴツした岩場なイメージもあります。
アメリカンなイメージがあるのは、アメリカ先住民族であるインディアンにとっては最も尊い神聖な鳥とされていたこと、さらにはアメリカの国鳥に指定もされており、国章にもハクトウワシが描かれています。ハクトウワシとアメリカとはもうズブズブの関係なわけです。
しかしなんと日本でも北海道などで目撃されているのです。
名前の由来は見ての通り、頭が白いのでハクトウと付いています。
ハクトウワシも、翼を広げると2メートルを優に超える大きさです。
オジロワシ
日本では北日本、そして北海道で見ることが出来るのがこのオジロワシです。
文字通り尻尾の先の辺りが白くなっており、全体的には褐色です。
ハクトウワシとは異なり白いのが尻尾だけなので、覚えやすいですね。
オオタカ
日本には広い範囲に生息しており、古くから親しまれているのがこのオオタカ。
オオタカの中でも複数種おり、日本に主にいる種類は目の後ろにかけての黒い縁取りと、眉毛の位置に白くうっすらと線が入っています。
クマタカ
クマのように大きくて強いという意味で名付けられたとされるのがクマタカです。
また、別の説で冠のようになっている頭の毛が角が立っているように見えるから角鷹(こちらもクマタカと読みます)、と名付けられたとされる説もあります。
トンビ
こちらがご存知トンビ。
こうしてタカの次に見るとどんどんわからなくなってきますね。
とにかくトンビは鳴き声で見分けるのが確実でしょう。
まとめ
日本で確認されているタカ科の鳥は22種類いるとされています。
しかし一般的に見かけることが出来るのはトンビぐらいでしょうか?
とはいえ全国に生息しているタカ科の種類もいますから、実は目にはしているけどわからなかったパターンというのもあるかも知れません。
今回ご紹介した鳥たちの中でも、ハクトウワシとオジロワシはデカさと見た目ですぐにわかりそうですね。
ただタカやトンビになってくると正直難しそうです。
最後にまとめますので、タカ科らしき鳥を見かけたら思い出してみて下さい。
・ワシ・タカ・トンビに明確な区別の基準はなく、ざっくりと大きさで分けられている。ワシ>タカ≒トンビ。
・トンビだけは鳴き声がピーヒョロロロロなので判別しやすい。
・漢字の由来も異なり、鷲、鷹、鳶とそれぞれ異なる字を書く。知ったところで実物を見分けられはしない。
・見た目でわかり易いのは、アメリカの国鳥でもあり、真っ白な頭部が特徴的なハクトウワシ、そして尻尾だけ白いオジロワシ。
鳥の世界、深いです。
そもそも余程好きでもなければ鳥を眺めることすらあまりありませんから、ぜひこの機会に様々な鳥、観察してみてはいかがでしょうか?
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