神社仏閣とひとまとめで言われる事は多くとも、どこか神社の「和」な雰囲気とは異なり仏教からは独特な雰囲気を僕は感じます。
僕の住む地域には神社とお寺が密集して存在していますが、果たしてそのお寺が何の宗派のものなのか、よく知らなかったりします。
そこで今回は、覚えておくときっとタメになる、代表的な仏教13宗派の違いと開祖をご紹介。
全ての始まりはインドのお釈迦様から
まず大前提として、仏教はインドのお釈迦様、ゴータマ・シッダールタが開祖です。ブッダ(仏)とも呼ばれますね。
すごく簡単に教えを説明すれば、人生(というか全ての物事)は輪廻の中にあり、その苦しみの輪廻から修行を重ねる事で解脱(悟り)することが最大の目的です。
もし深く知りたい方がいたらぜひ初期仏教から調べてみて欲しいのですが、とんでもなく複雑です。
釈迦の教え自体が複雑なのではなく、後世色々と解釈されていったり弟子同士で喧嘩して教えが分離したり、いやそれはこういう解釈だ、いやいやそうじゃない――と複数解釈が生まれたりと、カオスでひたすらに混乱します。
ですので、僕は仏教の根本を
苦しみの輪廻から抜け出す為に修行して解脱(悟る)に至る
事であるとシンプルに考えるようにしてますし、少なくとも僕にとっては生きていく上でそれ以上である必要もなさそうです。
ちょっと話が逸れましたが、とにもかくにもインドで生まれた仏教は、中国へ伝わり、日本へもやってきます。
なぜ宗派が沢山生まれたのか?
というと、色んな解釈をみんながしますし、場合によっては流行させたいが為に作り替えられていった側面もありますし、純粋にビジネスとしてであった場合すらあります。
今もしお釈迦様がこの仏教の枝分かれしまくった姿を見たらびっくりして笑っちゃうんじゃないでしょうか。
そして色々あった末に日本に伝わって根付いた仏教も、大きく5つに分けることができます。
まずは、平安仏教系。深く考えると混乱しますが、単に平安京を中心として広まった仏教です。
次に、平安仏教に対抗するかのような名前の、奈良仏教系。
海外の方も大好きな禅の禅系。
緩めのルールで人気の浄土系。
天台宗から枝分かれした法華系。
――と書いたところでピンとは来ないでしょうから、一気に13宗派も併せてみていきましょう。
平安仏教系
最澄が開祖の【天台宗】
平安仏教系である天台宗(てんだいしゅう)は、最澄(さいちょう)が開祖。
多くの仏教の元にもなっており「仏教の母」とも呼ばれる天台宗は、広く様々な経典や教義を吸収した総合仏教とも言える宗派。
その教えは、
全ての人々は仏の子であり、いかなる方法であっても真実を求める心さえあれば誰でも悟りを開くことが出来る
というもの。
主な経典は妙法蓮華経(みょうほうれんげきょう)です。
空海が開祖の【真言宗】
弘法大師こと空海(くうかい)が開祖の真言宗(しんごんしゅう)。
天台宗と真言宗は密教系とも呼ばれます。
真言宗の中でも更に宗派が枝分かれしており、ややこしいです。
その教えは、
三密行を行うことで即身成仏(今の肉体のまま悟りを開くことができる)できる
というものです。
本尊は大日如来(だいにちにょらい)で、主な経典は金剛頂経(こんごうちょうぎょう)と大日経(だいにちきょう)。
奈良仏教系
審祥が伝えた【華厳宗】
華厳宗(けごんしゅう)は、審祥(しんじょう)が日本に伝え、良弁(ろうべん)と共に広めていった宗派。
独特な世界観を持つ宗派で、修行が難しい事でも有名。
中国での開祖、杜順(とじゅん)も、全部の修行を達成できなかったそうです。
いやそれはちょっと……。
その独特で複雑な教えを超簡単に解釈すれば、
自分本位の偏った考え方、見方を捨ててありのままの姿を見よ
みたいなことかと。
経典は華厳経(けごんきょう)です。
道昭の広めた【法相宗】
道昭(どうしょう)が日本で広めた法相宗(ほうそうしゅう/ほっそうしゅう)は、開祖があの『西遊記』にも出てくる三蔵法師の玄奘(げんじょう)です。
この法相宗の教義は非常に難解で、三蔵法師様なんちゅうもんを始めちゃったンですか感があるのでちょっとwikipediaの法相宗の教義の項目から引用してみます。
法相(ほっそう)とは、存在のあり方を指す。個々の具体的存在現象のあり方だけでなく、一切の事物の存在現象の区分やその有様も指している。実際には、存在現象そのものに関しては、説一切有部などの部派仏教を中心に研究が進められ、その研究の上に、存在現象のあり方を、我々人間がどのように認識しているのか、という研究が進められた。さらに、最終的には一切の存在現象はただ識に過ぎないとする。
Wikipedia法相宗より
だそうです。
ちょっと何言っているかわからないです。
鑑真が日本に伝えた【律宗】
お次は鑑真(がんじん)が苦労の末日本で広めた律宗(りつしゅう)です。
律宗の字の通り、戒律に重きを置いた宗派で、四文律を重んじて研究と修行を行います。
教えと言うよりも、戒律を守って生活すること自体が修行となっており、それら戒律を守って生活することで成仏できるという考えです。
法華系
日蓮が開祖の【日蓮宗】
日蓮宗(にちれんしゅう)は日蓮(にちれん)が開いた宗派です。
法華経を主な経典としており、天台宗の延暦寺でも学んでいます。
天台宗も法華経を重視しますが、日蓮宗ほど特化している扱い方ではないです。
誰もが仏性を持っており、悟りを開くことができる。その為には南無妙法蓮華経と唱えましょう。さすれば悟りは開かれます。
さぁ皆さん唱えましょう。南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)。
念仏を重視してはいますが、次に紹介する浄土系のように唱えればOKではないです。
浄土系
法然が開いた【浄土宗】
浄土宗(じょうどしゅう)は法然(ほうねん)が開いた宗派です。
その最大の特徴は、修行を否定し、念仏を唱えることで極楽往生することが出来る点です。
修行がいらないわけですから、そりゃ流行ります。楽したいもんね。
ただししっかりと念仏は唱えねばなりません。
主な経典は観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)。
親鸞が開いた【浄土真宗】
親鸞(しんらん)が浄土思想を元に発展させたのが浄土真宗(じょうどしんしゅう)です。
浄土宗よりも更にありがたい阿弥陀如来パワーを得られる宗派で、特に何もしなくても阿弥陀様が救ってくれます。
救ってくれることへの感謝の証しとして、念仏を唱えるのです。
それが、阿弥陀如来を本尊とする宗派共通の、ナンマンダブナンマンダブの「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」という念仏です。
良忍が開いた【融通念仏宗】
浄土系でもちょっと変わった良忍(りょうにん)が開いた融通念仏宗(ゆうずうねんぶつしゅう)。
基本となる考え方が、
「一人一切人、一切人一人、一行一切行、一切行一行、是名他力往生、十界一念、融通念仏、億百万遍、功徳円満」
というもので、かいつまんで言えば「一人の念仏が誰かの、そしてすべての人への功徳になる」ということ。
一人の念仏が全ての念仏となる大念仏がウリの宗派です。
一遍が開いた【時宗】
浄土系最後は一遍(いっぺん)の開いた時宗(じしゅう)です。
これまた念仏が大切な宗派なのですが、違うところは
念仏そのものが往生であり、唱えれば即往生
という更にぶっ飛んだ解釈。
シンプル過ぎるが故に逆にどういうことなのかわからなくもなります。
禅系
栄西が広めた【臨済宗】
次に禅宗系です。
まずは栄西(えいさい)の広めた臨済宗(りんざいしゅう)。
禅宗系は悟りを開くことを大きな目的としており、坐禅はもちろんのこと、この臨済宗では公案(こうあん)と呼ばれる問答で、弟子たちに悟りを開くきっかけを与える方法も取られます。
これは一般的に言われる「禅問答」というやつですね。
1つだけ、とても有名な公案を紹介しておきます。
狗子仏性という問題ですね。
ある僧が和尚さんに尋ねました。
「犬にも、仏性はありますか?」
「ないよ」
「なぜないのですか?」
「自分に仏性があることを知らないからだよ」
僧はそれを聞いて悟りを開きました。
どういうことなんです?
と普通に考えがちですが、つまり公案(禅問答)というのは普通の解釈や科学的、物理的な視点などを超越した考えで世界を見る為の訓練とも言えるものですから、そう簡単に理解できるものではないということです。
悟った者にしかわからないのです。
道元の開いた【曹洞宗】
お次は道元(どうげん)の開いた曹洞宗(そうとうしゅう)。
悟りを得ようと修行することはダメで、そうでない修行によって悟りを得られるのだというなんだか理屈っぽい宗派。
坐禅を重んじており、中国での古来からの作法通りに壁を向いて坐禅を組みます。
隠元の開いた【黄檗宗】
最後は何だか面白い名前の隠元(いんげん)の開いた黄檗宗(おうばくしゅう)。
隠元って豆かよ笑
なんて思ったあなた、大いに反省してください。
この隠元さんこそ、インゲン豆を日本に持ち込んだ方なのです。
というか隠元が持ち込んだ豆に、インゲンマメと名前が付けられた、と言った方が良いですかね。
教えについてはほぼ臨済宗と似ているのですが、儀式で使われる言葉が違ったり、読み方が違ったりと細かな違いがあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
お寺と言っても沢山の宗派があり、それぞれの宗派がそれぞれの教義を真剣に追及しているわけで、宗教ってほんと凄いなぁ、と思います。
細かく覚えたところであまり使うシーンは無いでしょうが、ざっくりと違いと名前ぐらい覚えておけばきっと何かに役立つはずです。
ぜ家の近くのお寺が何の宗派なのか、調べてみてると面白いかも知れませんね。
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