ドラゴン、好きですよね!
ドラゴンを嫌いと言う人物に僕は出会ったことがありません。
――と、書き始めてから妻に「ドラゴン好き?」と聞いたら「ウネウネしてキモいから嫌い」と即答されました。
出鼻をボッキリへし折られましたが、今これを読んでくれているあなたはドラゴン大好きさんだと信じます。
さて、あなたは龍とドラゴンの違いを理解しているでしょうか?
英語で言えばどちらもDragonになりますが、日本で「龍」と「ドラゴン」とだとやっぱりちょっと違うように感じますよね?
そこで今回は最低限知っておきたい龍とドラゴンの違い。そして龍とドラゴンそれぞれの種類をいくつかご紹介したいと思います。
東洋と西洋とでイメージが異なる
まず頭にドラゴンという言葉から連想する怪物を思い描くと、鳥のように大空を羽ばたき、火を噴いて人を焼き殺すような巨大な姿を想像します。
では龍は?というと、日本昔話のオープニングと言えば伝わるでしょうか、とにかく長くて細長い体をウニウニさせながら大空を悠々と飛ぶ、長いヒゲのある怪物を想像します。
ドラゴンと龍、それらには明らかにイメージに差があります。
ドラゴンの特徴
ドラゴンはもとはギリシャ語でヘビを差すドラコという言葉でした。
それが中世になると西洋文化の中で邪悪で恐ろしいものとして大きな翼で空を飛んだり、毒や火を吹いたりする凶悪かつカッコいいモンスターへと変貌していったのです。
そして元のギリシャ語のドラコが凶悪な部分のみを引き継いでヘビと別れてドラゴンに独立していきました。
龍の特徴
日本での龍のイメージは、やはり中国が発祥。
日本神話でお馴染みのヤマタノオロチも、中国での龍の影響を受けています。
そして、ヤマタノオロチが蛇の頭を持つことからもわかるように、龍もまたヘビやワニなどの爬虫類がその起源になっています。
東洋・西洋で共通している価値観
ここまででわかっているのは、起源を辿れば爬虫類に行き着くということと、神聖視されていること、邪悪な存在とされていることでしょうか。
姿かたちに関しても、爬虫類ベースというのは共通しています。
しかしドラゴンには翼があるのに対し、龍には翼がありません。
なぜか?
龍とドラゴンが今のイメージになるまでには長い時間が掛かっていますが、当然宗教や地方毎の伝承なども受け継がれています。
そういう意味で考えると、中国や日本では特に「水」との関係性が色濃く出ている姿な気がします。
日本ではヘビは昔から神聖な存在であり、同時に不吉な前兆でもありました。
更にはヤマタノオロチやいくつかの妖怪伝承にも水とヘビとの関係は見られます。
翼はもたないけれども空も飛び、海中も泳ぐ。
ヘビのようでもありナマズのようでもありウツボのようでもあります。
一方西洋では、イナズマやコウモリなどと結びついているように感じます。
故にコウモリのような羽を持ち、火も吹く。
また、これは僕の勝手な考えですが「龍」の方が「ドラゴン」よりも神聖さが勝るように感じます。
それも永らく培われてきた龍とドラゴンの土壌の違いであり、自然への畏怖の心の差でもあるのではないでしょうか。
様々なドラゴン
では、東洋の龍と西洋のドラゴンとの差をもっと直感的に感じる為に色々と見比べてみましょう。
ウェールズの赤竜・白竜
こちらはイギリスを構成する国の1つであるウェールズの赤竜と白竜。
『ブリタニア列王史』に出てくる二匹の竜で、赤い竜がブリテン人、白い竜がサクソン人を表しています。
この『ブリタニア列王史』内では白い竜が敵ですね。
故に、赤い竜というのはウェールズのシンボルにもなっており、国旗にも赤い竜が描かれています。
北欧神話のニーズヘッグ
ぶっ飛びロマンの宝庫である北欧神話。
そこに、ラグナロク(終末の日)さえも生き延びると言われる黒いドラゴン、ニーズヘッグが登場します。
ラグナロクによって死んだ者たちを翼に乗せて運ぶ黒竜。最高かよ。
※ラグナロクなどについては過去記事で触れているのでご覧ください。
イギリスのワイバーン
ウェールズを擁するイギリスでも、赤竜とは別の、緑色のドラゴン(または赤)であるワイバーンが有名です。
ワイバーンは翼はコウモリ、ワシの足、ヘビの尻尾を持ち、特徴的な部分は二足しかなく、手のようなものはありません。
紋章や旗章にも使われる一般的なものらしいので、イギリスはドラゴン大国と言っても過言では無さそうです。
ただしドラゴン実在の伝説とかがあるわけではなく、あくまでも紋章としてこのドラゴンの姿が発展してきたのだとか。残念。
ゾロアスター教民話のアジ・ダハーカ
完全にラスボスな名前のアジ・ダハーカ。
確かFFでも出てきたはず。
三つの首があるキングギドラパターンの伝承もあり、それぞれの首が苦痛、苦悩、死を表すという中二全開の凶悪なドラゴンさん。
アジ、とはヘビを表す言葉なので、やはりアジ・ダハーカもヘビが元になっているのがわかります。
神話内でもラスボス的存在。
様々な龍(竜)
次に、我らが日本、そしてアジアンな龍を見てみましょう。
日本神話のヤマタノオロチ
日本で一番有名な龍と言えばヤマタノオロチではないでしょうか。
スサノオによって退治される有名な逸話の大ボスです。
8つの首に8つに分かれた尻尾の龍で、正体は豪雨で暴れる幾枝にも分かれた川であり、それをなんとか治水した様子がこのヤマタノオロチ伝説の真相なのではないか、とも言われていますね。
仏教の龍王の一尊である善女龍王
二代目歌川国貞
仏教の中に龍王と呼ばれる蛇の化身であり、鬼であり、精霊でもあるナーガラージャと呼ばれる龍王達がいます。
もう仏教が出てきた途端に一気に説明が難しくなるのですが、とにかく龍王と呼ばれる龍の人姿をしたすごいヤツラがいるのです。
その内の一人、善女龍王(ぜんにょりゅうおう)は雨乞いの対象とされるナーガラージャです。
弘法大師こと空海が神泉苑にてこの善女龍王を呼び出したという伝説も有名です。↑画像がその時の様子を描いたもの。
中国の神話の四神である青龍
中国の神話に出てくる四神、青龍(せいりゅう)・玄武(げんぶ)・白虎(びゃっこ)・朱雀(すざく)の青龍もまた有名な龍です。
方角も司っており、東が青龍、南が朱雀、西が白虎、北が玄武となっています。
他にもこの四神は様々な事象が割り当てられており、季節では青龍が春、朱雀が夏、白虎が秋、玄武が冬となっています。
僕なんかは昔やったゲームに出てきたものですから、なぜか覚えていたのですが、知らない方の為に姿をお伝えしておきます。
青龍はそのまんま青い龍。
朱雀は赤い鳥。火の鳥みたいなイメージ。
白虎はそのまんま白い虎。
玄武は黒い亀です。
日本に伝わる様々な龍
他にも日本には独自の龍への信仰が沢山存在しています。
仏教に影響を受けたものだけでなく、日本人のスキル「オリジナル化」が発動して様々な形で信仰の対象とされたり、伝承が残されたりしたのです。
特に水神として龍を崇めるタイプの逸話や信仰は多く、例えば浦島太郎で有名な「龍宮」も最後まで龍は出てきません。
あくまでも信仰の対象であって、実際に龍がいた、というような伝承はほとんどないのです。
妖怪と似たような仕組みですね。
まとめ
ドラゴンと龍の違い、そしていくつかの種類、いかがでしたでしょうか?
西洋と東洋とでは宗教の違いや土壌の違いから全く違うタイプのドラゴンが育ちました。
しかし根底にあるのはヘビ(やワニなどの爬虫類)への恐れや畏怖です。
さらに日本ではそのヘビへの畏怖心が自然とも結びつき、水神信仰となり龍神信仰にまで発展しました。
不思議なのは、ヘビがそのように世界中で恐れられていたことです。
毒で死者が多かったからなのか、見た目が不気味だからなのか。
理由はわかりませんが、恐るべきヘビは大空を羽ばたく巨大なドラゴンとなって今も人々から崇められているという事がなんだか不思議で面白いです。
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